「投資マンションにカモられた人」が見た地獄

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ワンルームマンションなどの投資物件を扱う不動産会社は、とくに「買わせてなんぼ」の世界。セールストークも実に巧みだ。こうした会社は、まずターゲットの勤務先に電話をかけて営業する。「節税できる」「生命保険の代わりになる」「将来の年金になる」などとあおる。そこで「脈あり」と思われてしまうと、営業マンとの面談やセミナーへの来場などを勧められる。

実際に足を運べば、「飛んで火に入る夏の虫」よろしく、あの手この手のトークでたたみ掛けられる。そしてあれよあれよという間に契約書にサイン。「言われるがままに買ってしまった」ということになりかねない。

関西圏で投資用ワンルームマンションを2戸購入した会社員のAさんは、大阪の不動産業者から電話勧誘を受けた。当初は疑いの目で見ていたが、「マイナスにならない」「税金対策になる」などという説明と「決算で早い者勝ちだから」と急かされたこともあって、営業マンの言うとおり新築マンションを2戸契約した。

その後、その営業マンからまたすぐ電話がかかってきた。「また良い物件があるから特別に案内します」と長時間説得されて疲れてしまい、「わかりました。話を進めてください」と言ってしまった。

ただ、「さすがに、そうそううまい話はないのでは」と不安になり、ネットなどで投資マンションのことを調べてみると、該当の物件は注意すべき項目として当てはまることばかり。不安でたまらなくなり、仕事にも支障が出てきてしまったため、これ以上冒険はできないと不動産業者に連絡。かなりキツい事をいわれたものの、2時間以上の電話のやりとりでなんとか追加の3戸目の物件は断った。「そんなの、あり得ないでしょ」と思う人も多いようですが、実はこういう人は、結構いる。

医者は特に狙いやすい

不動産業者の営業マンから狙われやすい職業の一つは医者だ。「高収入なので税金が高いですよね? マンションをローンで買えば税金は半分以下になりますよ」「自己資金はいりません」。こうしたトークに乗せられ、普段の勤務が忙しすぎてあれこれ考えるのが面倒になり、「プロに任せよう」と判断してしまう。ところが、いざフタを開けてみたら節税どころではなく、たいへんな状況に陥ってしまっている場合がほとんどだ。

ある病院に医師として勤務するBさん夫妻は、2人で7戸の投資用マンションを所有していた。Bさん夫婦はいずれも30代半ばで、物件は節税を主な目的と称してそれぞれ独身の時と結婚後に購入した。厳密な収支計算をしてみると、Bさん自身が年間35万円、奥さまは同72万円の持ち出し、つまり赤字になっていた。

奥さまが所有していた物件の中で、最も損をしていたのがある関西圏の物件。購入時3200万円程度のファミリー向けの3LDKのマンションでありながら、投資用として販売されていた物件でJRの最寄り駅からは徒歩2分。とはいえ、1時間に3本くらいしか列車が来ないローカル線であり、入居状況は芳しくなかった。この物件だけで年間35万円の損が出ていた。

Bさん夫婦は物件の売却を順次進めている。ただ、購入時に1500万円程度だった物件が、900万円程度まで下がっているケースもあり、損切りにはかなりの金額を自己資金で補てんする格好だ。こうした医者の中には複数戸の物件を買わされているケースも多々あり、中には10戸以上という例もある。

私が知る中でも、投資用マンションを8戸購入し、それも購入代金の99%がローンという医者がいる。全部で2億円以上の借金をして、年間で数百万円の赤字を出している。それでも不動産業者は「もっと買ったほうがいいですよ、○○先生なんかも購入したので大丈夫ですよ」と買いをあおる。購入した物件すべての全体像を絶対に明かされないようにするため、巧みなトークで最後の最後までカネを引っ張る業者がいるから恐ろしい。

独身の「おひとり様」が格好のターゲットになるケースもある。中心は35〜45歳のサラリーマンとOL。男性より女性のほうが真面目で貯蓄も多いため、狙われやすい。例えば、「婚活」と称して不動産会社の社員が暗躍して独身者に営業をかけたケースがあった。

不動産会社は手順を心得ているから無駄なことはしない。早いうちになにかしらきっかけを作って相手の収入を探り出そうとする。どうやって探るのかといえば、いちばん手っ取り早いのが、その人の「源泉徴収票」を見ること。「自分はFP(ファイナンシャルプランナー)的なこともやっているので、税金や保険での出費を節約できるノウハウがあるから役に立てるかもしれない」など、源泉徴収票を持参させる。

源泉徴収票を見れば、収入はもちろん、会社の勤続年数や配偶者の有無、生命保険の加入状況などの個人情報が丸わかりだ。これらがわかれば借り入れ可能な金額も計算できるから、投資物件購入の可否判断も容易についてしまう。

婚活で不動産投資の営業ウーマンと知り合った30代男性のCさんは、勧められるがまま首都圏近郊に2300万円程でワンルームマンションを購入。そもそも相場より高く買わされ、賃料収入はサブリース契約で年に約90万円だった。

ところが厳密に計算してみると、赤字は年に20万円。10年持ち続ければ200万円の赤字となるから、まったく割に合わない。損切りしてでも、と言って売却した。彼はほっと胸をなでおろし、「心穏やかな生活が戻ってきた」と話をしていた。

投資物件を勧める不動産会社のセールストークは、将来の不安を突いて「30年後には年金代わりになる」と言う。しかし、今は新築できれいなマンションも30年後にどうなっているか。いま盛んに建て替えが進められている旧公団住宅の団地を思い浮かべるといいだろう。ひょっとしたら「価値がゼロ」になっているかもしれない。売るに売れず負債だけが残り、「将来の年金」どころではないし、修繕や建て替えなどでさらに持ち出しが増える可能性すらある。

また、いまはローン金利が低いので「借り得」に見えるが、将来も金利が上がらない保証はない。金利が上昇したら、ローンで大きな借り入れをしている人は支払いが厳しくなってしまうだろう。

マイナス金利の影響か、ある地方銀行は地元の資金需要が少ないために、貸し先をこうした投資用の不動産に貸し込んでいく。不動産業者にとってはいい「相棒」というわけだ。

しかも、この低金利時代に年利3%以上という尋常ではないローンを。物件の条件が悪いのでメガバンクは貸さないとわかっているからこそ、高金利で貸し込んでいるのだ。

銀行側のリスクヘッジは不動産が担保であり、借り入れした人の給与が担保になっている。しかも、高い金利ならば儲かる仕組みである。結局のところは、売った不動産屋とカネを貸した銀行が儲かるという構図が見えてくる。